やっぱりここじゃなかなった、ということを確かめるためにやってるんだ
と独り河原でつぶやく。
へへへへ、と独り不気味に笑う。
「今度こそ、ここには何かあるんじゃないか」と思いながらするというのとは決定的に違っているということがわかっただけでもじゅうぶんだ。
ようやくここにたどり着く。
「東山の和室」を出たときは漫然と、とりあえず散歩に出た。
決めないといけないことがあって、それについて考えようとしている自分に気がついて、けれど考えようとしている時点で何か違う風になりそうだということに気がついている。
この視点ではどうだろう、あれについてはどうだろう、という風にチェックリストを埋める感じに思考が働き出すと、その先には何もないどころか何かおかしなことになるということに気がついているので、そういう思考になりかけるのを自覚しながら、とりあえずコンビニに寄って用を足す。
発泡酒を買って河原に出て、飲みながら煙草を吸う。七輪の火を眺めているみたいだ、と思いながら対岸の店の灯りを眺めながら、チェックリストはだんだんとその影を潜めて酒と煙草の効果で意識がぼんやりと霞んでいく。
するとなんとなく浮かんでくる何かがあって、それは友人から勧められてついさっき観た『おもひでぽろぽろ』のシーンだったり、職場で過ごしている会議の場面だったりする。
流れるままに頭と身体を任せていると、冒頭に書いたような言葉が口をついて出てきていて、ここでぼくは初めて独り言を言う。
独り言として勝手に出てきたという時点でもうぼくにとっては説得力があって、根拠とか理屈とかを越えてもう事実として存在してしまったのでどうしようもない。その事実を目の前にして、へへへと笑うしかない。
ここまでくると、独り言として出てきたことについてもう少し探求したくなってコンビニに戻ってチューハイを買ってもう一度河原に出る。2ラウンド目のスタートだ。
ぼんやりした視界と妙に冴えた感覚、ここだけ押さえていられるならあとはどうとでもなるという感覚が同居しているのを感じながら、独り探求をすすめる。
ここでやはり「もうじゅうぶんだ」というところにたどり着いて、立ち上がる。ふらふらと歩きながら自販機の脇のゴミ箱に缶を捨てて、和室に向かって歩く。端から見たら危ない人なんだろうと思いながら、身体が冷え切っていることに気がついて、帰ってコーンスープを飲んでこのことを書いてしまえばもう完璧だという気分になっている。
帰ってきてこうして文章に残しているということによって、ぼくは今存在している。