2015年6月20日土曜日

「困る」人

「僕」は、どこかそわそわした気分でいる。
じっとして居られなくなり、とりあえず歩き始める。

ふと横に目をやると、誰かがいる。
なんとなく気になって、歩いていき、話しかける。

その誰かはこう言う。
ああ、そうですか、そうなんですね、わかります。
こういうことでお困りなんですね。

「僕」は答える。
ああそうか、そうです、そうなんです。
ぼくはまさにそれで困っていた気がします。

誰かは言う。
ええ。さぞお困りだったでしょう。
こういう風に考えるといいですよ。
あなたにはこういうことが必要で、こうやってこうなるのがいいですよ。

ああ、ありがとうございます。
そうか、これをやればいいんだ。あれをやればこうなれるんだ。
少し元気になって、また歩く。

しばらくすると、どこか調子がおかしくなってくる。
あれ、こうしてるはずなのに。
まだ足りないのかなあ、次はこうしてみたらいいのかなあ。
こうすればこうなれるはずなのになあ。

少し引き返して、さっきの誰かをたずねる。
あのう、こういう風にしてみているんですけど、
なかなかこうならいんです。

すると誰かは言う。
そうですか、そうですか。ええ。
きっとまだああいうことが足りないんですよ。
わたしはこんな風にやってみましたよ。
そうだ、あっちのあの人はああいう風にやっているそうですよ。
ええ、きっとああすればこんな風になると思いますよ。

ううん、そうか。言われてみれば、そんな気がする。
そうだよな。うん、そのはずだ。そうしよう。
また歩く。

痛みを感じて立ち止まる。
かかとに、靴ずれができている。

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