「僕」は、どこかそわそわした気分でいる。
じっとして居られなくなり、とりあえず歩き始める。
ふと横に目をやると、誰かがいる。
なんとなく気になって、歩いていき、話しかける。
その誰かはこう言う。
ああ、そうですか、そうなんですね、わかります。
こういうことでお困りなんですね。
「僕」は答える。
ああそうか、そうです、そうなんです。
ぼくはまさにそれで困っていた気がします。
誰かは言う。
ええ。さぞお困りだったでしょう。
こういう風に考えるといいですよ。
あなたにはこういうことが必要で、こうやってこうなるのがいいですよ。
ああ、ありがとうございます。
そうか、これをやればいいんだ。あれをやればこうなれるんだ。
少し元気になって、また歩く。
しばらくすると、どこか調子がおかしくなってくる。
あれ、こうしてるはずなのに。
まだ足りないのかなあ、次はこうしてみたらいいのかなあ。
こうすればこうなれるはずなのになあ。
少し引き返して、さっきの誰かをたずねる。
あのう、こういう風にしてみているんですけど、
なかなかこうならいんです。
すると誰かは言う。
そうですか、そうですか。ええ。
きっとまだああいうことが足りないんですよ。
わたしはこんな風にやってみましたよ。
そうだ、あっちのあの人はああいう風にやっているそうですよ。
ええ、きっとああすればこんな風になると思いますよ。
ううん、そうか。言われてみれば、そんな気がする。
そうだよな。うん、そのはずだ。そうしよう。
また歩く。
痛みを感じて立ち止まる。
かかとに、靴ずれができている。
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