「書生をしている」という友人の大谷さんを訪ねた。
東山に、書生を訪ねる
東山に、書生を訪ねる その2(7月31日)
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待ち合わせ時間からおよそ1時間遅れてマルイに到着して大谷さんに電話するとみんなは6階のメガネ売り場にいるというのでエスカレーターで上がる。なんでメガネ売り場にいるんだろうかと考えかけてけれど理由がわかったところで何ということもないという気分が先に立って思考が止まってただ身体は6階に運ばれて行く。
「雪駄の会」と銘打たれた会が友人5人とこの日の16時集合であって、錦市場の雪駄が売っている店に皆で行くことになっていてぼくは遅れている。最寄駅に着いて電話した時に皆はマルイに移動したことがわかって、ぼくは皆がもう雪駄を買い終えたか買わなかったか、とにかく雪駄を買う時間は終わったのだと思う。もしくはマルイに雪駄を見に行ったのか。
6階に到着するとすぐにメガネ屋のロゴが目に入ってそちらを見る。客の中に見覚えのある人を少し探してほどなく甚兵衛を着た2人の長身の男を見つけて、友人のけんちゃんと大谷さんだとわかって次にカラフルなスカートを履いたうみちゃん、帽子をかぶったみおさんを見つける。客に混じって白いワンピースのなっちゃんも見つける。
メガネ売り場の端で話を聞いているとみおさん以外は全員雪駄を買い、もう大谷さんとなっちゃんがメガネを注文したところだそうで時計を見るとまだ17時頃で、ものの1時間のうちにどれだけのことが起こったのかと驚きかけたかれどこの顔ぶれで居るとこういうことが起こっても不思議ではないという気がして落ち着く。
うみちゃんがぼくが木曜日に書いたブログの感想を伝えてくれて嬉しくなる。あの小説のようななんとも説明のつかない体験は誰にも話していなくて、けれど文字には残していてそれを読み取った人とこうして話をしているということがもう現実感がないけれど現実だ。大谷さんから話を聞くと部屋にあったパソコンも「interesting男」からもらったものだと聞いてさすがに面食らう。けんちゃんはあの日の夜、大谷さんに電話をしたけれど当然大谷さんは部屋に携帯を忘れていたので誰も出なかった。ぼくもあの夜着信音を聞いてはいないのでぼくが帰った後にかかってきたのだろう。もしぼくが部屋にいる時にかかってきていたら、大谷さんが携帯を部屋に忘れていたことをその場で知ることになっただろう。同じ時間に別々の現実が交差していてその接点をあぶり出していく作業をしている。
メガネが仕上がるまでに時間があるので河原に行く。リカーマウンテンとファミリーマートに寄って酒と食べものを買う。四条大橋から河原に降りる。その日は四条大橋北側の河原に屋台のようなものがたくさん出ていてぼくたちは橋の南側に空いている場所を見つけて6人で座って買ってきたものを広げて飲んで食べる。最初は「これちょっとちょうだい」と言いながら他の人が買ってきた酒やつまみに手を伸ばすけれど途中から誰の酒か誰のつまみかを気にせず飲み食いするようになってこれがちょうどよいと思う。各々が勝手に飲み食いしたいものを買ってきて持ち寄ってそれは誰が食べてもよいことになるという方式は「持ち寄り食会」そのものでこれが楽しい。マッコリがチェイサーだと言いながら沖縄の泡盛をこれは危険だといいながら煽る。
仕上がったメガネを受け取ってもう一度河原に出てその前にまた各々で買いものをしてからやはり飲む。今度は川の東側でこちらは暗く、川の西側の川床や店舗や屋台の明かりが目に入っていてあたりは暗くなってきている。恋愛の話や自分の呼ばれ方の話やなんの話ともつかない話をしているうちにサングリアが1本空いていて、川沿いを北に向かって歩く。こちら側から川の反対側はよく見える。向こうからおそらくこちら側は見えない。
フレスコに寄ってまた買い出しをしてまた河原に行ってまた飲んでいるといい時間になっていて解散することになる。ぼくと大谷さんとけんちゃんは東山の和室に行くことになり歩いて向かう。アパートに到着すると「interesting男」は隣の隣の部屋に住んでいて換気のためか扉が開いていてセサミストリートのクッキーモンスターの置物がドアストッパーになっている。部屋の灯りは点いていて物音はするけれど男の姿は見えず、クッキーモンスターの焦点の合わない目線と目が合う。部屋の中は猛烈に暑く、手ぬぐいを濡らして首にかけてTシャツを脱いでしまう。蚊取り線香の煙が漂っている中けんちゃんが澪さんから帰り際に渡された催しの案内文を読んで黒霧島を飲む。3人でここに座っているという時間が成立していることに現実感がないけれどやはりこれは現実で、回して吸い続けたアメリカンスピリットはもうあと2本になっている。
一夜明けて誰ともなく身支度をして部屋を出る。階段を降りると1階の共用トイレから男が出てきて 昨日お酒ありがとうございました という。男は白いタンクトップを着ていて寝起きなのか酒が入っているのか目があまり開いておらずこちらも頭がぼーっとしていて酒に心当たりがなく どうも、 と焦点の合わない目で会釈のような動きを首がする。後ろから大谷さんが続いて階段を降りてきて男がまた 昨日お酒ありがとうございました というと大谷さんは彼がinteresting男だとわかっていて返事をする。
帰ってブログをチェックすると大谷さんが昨日酒を男に差し入れていたことがわかる。やはり現実が交差している。
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