きのうくらいからどうも気分が晴れなかったのだけれど
この1時間は、この2日くらいの中でいちばんいい時間だった。
年末に講読ゼミで読んだ『モモ』に出てくる「円形劇場」を思い出した。
こういう時間があれば生きていけるような気さえしてくる。
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夜、地元の最寄り駅に着く。
階段を降りていると、古くからの友人に偶然会う。
「よく駅で会うよなぁ」と言いながら改札を出る。
彼は「俺仕事辞めるかもしれんわ」と言い出す。
ぼくは「そうなんや」とこたえる。
「コンビニ行かへん」と誘われる。
傘をさして数分歩く。
彼が仕事の話をするのをきく。
友人は「この時間に帰ると晩飯ないんやわ」といっておにぎりを買う。
ぼくは体を暖めたかったので久しぶりに缶コーヒーを買う。
「ぱーちゃんは何を目指してるん」と聞かれる。
「ぼくはなんも目指してないなぁ」とこたえる。
歩きながら、ぼくも話したくなって自分のことを話す。
「帰り道逆ちゃうの」と聞かれる。
「ちょっと喋りたくなってきたし歩くわ」と返す。
「TSUTAYAでも寄って帰るか」という話になる。住宅街を抜けながらお互いにぽつぽつと話す。
不安の話。
プレッシャーの話。
「きょう会えてよかったわ」「ジュースでもおごるよ」と彼は言う。
ぼくは「おなかちゃぷちゃぷなるからええよ」と笑う。
「きょう会えてよかったわ」「ジュースでもおごるよ」と彼は言う。
ぼくは「おなかちゃぷちゃぷなるからええよ」と笑う。
店に着いてなんとなく2階に上がる。
洋画コーナーを一周する。
「最近ブルーレイレコーダー買ってしもたわ」と彼は笑う。
「そういえば去年、部屋のブラウン管テレビ捨ててしもたわ」とぼくも話す。
中古DVDの並ぶ棚をぼんやり見ながら話す。
彼の職場の上司の話。
家族の話。
お金の話。
ぼくの友人の話。
1階に降りる。
中古CDの棚をみながら、
この間久々に会った同級生の女の子の話をする。
2人ともなにも借りずに店を出る。
自販機の前で「なにがいい?1時間もつきあわせてしもたし」
「ほんまやったら1万円くらい払いたいけどな、でも所持金3千円や」と彼は笑う。
ぼくは「えーっほんなら振り込んどいてや」
「じゃあ帰り道これであったまろかな」といって渡された小銭を受け取る。
ホットミルクティーのボタンを押す。
少し歩いて、「また飲みにでもいこか」と言って別れる。
缶で手をあたためながら自宅に帰る。
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