店内のメニューもおもしろかった。 |
四条河原町から叡山電鉄の修学院駅まで歩いた。
けっこう疲れた。
なぜわざわざそんなことをしたかと言えば、とある事情で「出町柳界隈に住もうか」と考え始めているから。ネットで賃貸やシェアハウスの情報を見ていても全然ピンと来ないので、とりあえず近辺を歩いてみることにした。
とはいえ今の段階では住まない可能性の方が高いので、必死に物件は探さない。「出町柳界隈から北に向かう」「その都度気が向くことをする」「明日の朝の仕事に間に合うよう帰る」ことだけ決めた。「◯◯駅付近を集中的に見る」とか、「何時にどこでお昼を食べる」とか、「何時にバスで帰る」とかは決めない。「下宿、入居希望者募集」とかいう張り紙でも見つけたらラッキーかな、というくらいの気持ち。
今日体験したことをすごく書きたくなって、どうして書きたいんだろうと考えていたら気がついた。去年からずっとおもしろがっている、寄ってたかって本を読む講読ゼミと似ている。あと、上限額を決めて各自が食べたい物「だけ」を持ち寄って開催する「持ち寄り食会」(友人の大谷さんのブログ)にも。それから、自然に囲まれた徳島の山奥で、自分たちで過ごし方を決める3泊4日「上勝"少年"探偵団」でやった沢登りの感じとも。
スタート(動機)だけ決まっていて、ゴール(目標)は決めない。そして「その都度自分が見えているもの、自分の状態をできるだけ、そのまま差し出す」という部分において妥協しない。瞬間・瞬間の勝負が積み重なり、結果として、終わった頃には思いもよらない場所に到達している。
こんなにおもしろいことはない。
きょうは到達した「ラーメン屋の時間」がなんだか嬉しかったので、ちょっと長くなったけれど書き残しておく。
----------------------------
歩き始めてしばらくしてから、ラーメン屋に入った。おなかも空いてきていて、冷えた身体を暖めたかったのでちょうどよかった。
店内には欧米系の旅行者夫婦らしき2人組と、ほか数人。ぼくは出入り口近くのテーブル席に座った。ほどなく、常連らしきサンダルのおっちゃんが入店。するとちょうど会計を終えた欧米系の男性がサンダルのおっちゃんに「hajimemashite(はじめまして)」と話しかけた。おっちゃんは何か言葉を返したようだけど、欧米系の彼は自分の「はじめまして」が伝わったのか不安なのか、ぼくの方を見た。ぼくが「大丈夫、合ってる」みたいなニュアンス(ほぼ日本語)で返すと、彼は「日本語は発音が難しい」みたいなことを英語で言いながらぼくとおっちゃんの席のそばに来た。
サンダルのおっちゃんはすごくフレンドリーで、「おれは外人が話してるのをカセットに録音して聞いて、外国語を勉強した」「(欧米の彼に)この腕時計やるわ!おんなじモデルぎょうさん持ってるから」とか、次々に喋るんだけれど全部日本語なので、欧米の彼がぽかーんとした表情でまたぼくの方を見る。
「これは『訳して』ということか…」と思って、文法は無視してどうにかこうにか訳してみると、何となく伝わったらしい。なんだか通訳になれた気分がして嬉しくなり、「どこから来たの?観光?」と欧米の彼に聞いてみると、いろいろ教えてくれた。
2人はオーストラリアから来ていて、来日は7年ぶりだということ。前回京都に来たときに出会った「イシダさん」という方にふたたび会いにきたこと。「イシダさん」は今は病気で入院していて、その病院にさっき行ったが2日前に退院していたことがわかり、会えていないこと。そして自宅の住所は分からないこと。
彼がカバンから出してくれた7年前の「イシダさん」とのツーショット写真を見ながら「入院先知ってるんやったら自宅も聞けるんちゃう」「会えるといいなあ」みたいなことを考えたけど、英語が瞬時に出てこなかった。
すると彼は「この辺に住んでるの?」とぼくに聞いてきたので「いや、京都やけど別の街に住んでいて、今日はこの辺を散歩してる」みたいなことを返した。彼がぼくの名前を聞いてくれたので伝えると、向こうも名前を教えてくれた。そのあと、2人は先に店を出て行った。
見るからに「旅行者」なのはあの2人だけど、ぼくも旅行者の気分だった。初めて来る土地の、初めて入るお店で、初めて会った人と、慣れない言語でやりとりして、何だか分かち合えた感じがしたのが嬉しかった。
そのあと、コンビニや書店やスーパーに立ち寄ったりしながら修学院までぷらぷらと歩き、雪も強くなってきて身体も冷えきったので帰ることにした。
----------------------------
結果、(やっぱり)「下宿、入居者募集」とかいう張り紙は見当たらなかった。でもそれは大した問題ではない。なんだかもう、ラーメン屋の一幕でけっこう満たされていた。
実はラーメン屋の前に、イスラエル料理屋(ぼくは初めて見たので珍しかった)と行列のできているトンカツ屋も見つけて気になっていた。入るか迷ったけど、見つけた時はそう空腹でもなく、温かいものが食べたかったのでスルーした。「どこにお店があるか分からないので、このあたりで食べておこう」とか考えていたら、そもそもあのラーメン屋に行くこともなかった。
珍しさと、行列と、先の見えない不安に負けていたら、きっとぼくは今日旅行者の気分を味わえていない。
0 件のコメント:
コメントを投稿