2015年2月12日木曜日

自分で髪を切った


夜。
ふと思い立って、部屋にある散髪用のすきバサミを取り出す。
リビングに行き、新聞の折り込みチラシを数枚持ち出す。
洗面所の流しに、チラシを敷く。
鏡の前で、いつものように、もみあげにハサミを入れる。

耳の上あたりのごわつきが気になったので、ここにもハサミを入れてみる。
ざくっ と音がして、もみあげの時よりも大きな毛の固まりがチラシに落ちる。
固まりを見ながら「ああ、案外切れるもんだな」と思う。

初めて、頭のてっぺんにもハサミを入れてみる。
また、ざくっ と音がして、大きな毛の固まりがチラシに落ちる。

なじみの散髪屋で、いつも
「長さはあまり切らなくていいので、量を減らしてほしい」と頼んでいたことを思い出す。

ハサミを入れる場所と角度を変えてみる。
やはり、ざくっ と音がして、毛の固まりが落ちる。

切る、ざくっ、毛が落ちる、を繰り返す。

母親が通りかかり、「散髪してんの」とぼくに聞く。
「うん、案外自分でも切れる気がして」とこたえる。
母は「くせ毛は便利やな」「こんなんもあるで」と、
初めて見るような散髪器具を洗面所の引き出しから取り出す。
うまく使いこなせず、器具を洗濯機の上に置く。

また、切る、ざくっ、毛が落ちる、を繰り返す。

鏡に、ずいぶん髪のボリュームが減った自分が映っている。
「散髪屋はまた今度でいいな」と思う。

チラシの上に、大きな毛の固まりが転がっている。
チラシにくるんで、ゴミ箱へ放り込む。
部屋に戻る途中、髪の間を空気が抜けるのを感じる。

----------------------------------------

ぼくにとっての「散髪」はこれまで、2ヶ月に1回はするべきものであり、近所のなじみの理髪店に行くものであり、席に座っていつものように頼めば心配ないものであり、仲のいい理容師のお兄ちゃんと話すのを楽しむもの、であった。

その見方が変わった。

自分の髪がどう生えているかが何となく分かる気がするので、切る過程がおもしろい。
もみあげや襟足は、ちょっとテクニックが要りそうとわかる。
量を減らすだけなら、案外自分でもできる。
でも、店のお兄ちゃんとはまた話したいなと思う。
なら、もみあげや襟足を整えたくなって、話したくなった時に行けばいいのだとわかる。
結果的に散髪代も少なくて済むのでうれしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿