2015年2月3日火曜日

インドカレー屋の30分

カレー屋を出てからの散歩のほうが、
よほどいい時間だった。


何日か前の負け戦の記録。

カレーの味が、とか、店員の態度が、とかいう話ではなく
「カレー屋に入った」という時点でもう何かがズレ始めていた。

この日感じていた疲れやストレスを正面から受けとめきれず、
「カレー屋で食事をする」ことを通して和らげようとしていた。

結果としては別に和らぐことはなかった。

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昼頃。ビルの階段を上がり、2階のインドカレー屋に入る。
奥のテーブル席に座る。

店員が水を運んでくる。
店先の看板で目にした「日替わりカレーのランチセット」を注文する。
「カレーの種類は何だろう」と思う。
特に店員から説明はなく、そのまま店員の後ろ姿を見送る。

カバンからiPhoneを取り出す。
「きっと飛んでないやろうな」と思いながら、公衆wi-fiを探す。
案の定接続できる電波はなく、画面をただ何度か指で横になぞって机に置く。

テレビの音が聞こえる。
「殺害されたジャーナリストの母親がコメントを発表した」とキャスターが話している。

店内に大きな話し声が響く。
インド人らしき店員同士が、恐らくインドの言葉で話をしている。

スープが運ばれてくる。
何のスープか聞き取れなかったが、聞き返さず飲む。
カレーが来るまで残しておこうか、と考えて手を止める。

別の店員がにやにやしながら近づいてくる。
店員がぼくのスープカップに手を伸ばす。
まだ中身が残っているのを見て「オゥ、ゆっくり飲んでください」と言って去っていく。

しばらくして、同じ店員が「オイシイカレー、オイシイカレー」と言いながらカレーとナンの乗った皿を持ってくる。
ぼくは「これ何ですか」と2種類のカレーを指差して店員にたずねる。
よく聞き取れなかったが、「ほうれん草鶏ミンチカレー」と「野菜カレー」だと解釈する。

「野菜カレー」には、薄く切ったマッシュルームとグリーンピースが入っている。
「ああ」と思う。
「野菜カレー」を「片付ける」ような気分になりながら食べる。

「野菜カレー」を食べ終わる頃には、ナンが冷めて固くなっている。
机にナンのくずをこぼしながら、冷めた「鶏ミンチカレー」を食べる。

食べ終えてレジに向かう。

料金を支払った後、「レシートください」と伝える。
店員の動きが止まる。
店員はもう一度レジのボタンを押す。
ぼくの精算分のレシートが、前の客のレシートを押し出しながら出て来る。

レシートを受け取り、「ごちそうさまでした」とつぶやいて店を出る。

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